ホーム > 曽根先生の通訳学習相談室 > Question 17
曽根先生の通訳学習相談室
日→英訳について、文を作る際、どうしても自分の使い慣れた構文を多用して単調な訳文になってしまいます。日→英訳をする際の「コツ」「気をつけること」など、ぜひ教えてください。(英語通訳コース本科3受講生)
通訳をする際の基本は、話し手のメッセージを聞き手に正確に伝えることです。例えば、「忙しいから今日は行けない」というメッセージの表現として、I am very busy, so I can not go., I am so busy that I can not go. , I can not go because I am very busy. , I am too busy to go. , Being busy, I can not go. , As I am busy, I can not go. など、様々な言い方がありますが、この6つの文章ならどれを使っても伝わります。この6つの文章はみな単純ですが、通訳の基本はメッセージを正確に伝えることですから、単純・単調であっても、メッセージを正確に伝えている文がすぐに出てくる事が最優先です。
では皆さんに、「日→英の通訳をするとき、正確な訳出ができているか?」という点について、自分自身の能力を分析していただきたいと思います。例えば、次のようなレベルで分類してみましょう。
あなたはどのカテゴリーに入りますか?
今回の質問は「使い慣れた構文を多用して単調な訳文になってしまう」という悩みですが、「単調な訳文」そのものは悪いことではありません。文法および単語や表現の使い方が正しければ、少なくともメッセージは正確に伝わります。「洗練された英語で話したい」「知的な表現で作ろう…」などと考えて、あたふたしてパフォーマンスが崩れてしまうのは本末転倒です。上記のカテゴリーで言えば、常に(5)の訳出ができていない限り、自分の訳出の単純さを問題にする必要はありません。(1)~(4)のカテゴリーの人は、まずは日本語のメッセージを聞いたときに、その内容を瞬時に理解して、単調な訳文になったとしても、文法的には正しい構文で、素早く、安定したテンポで訳出できることをめざすべきです。「単調な訳文であっても、常に安定して正しい訳出ができている」というレベルに達した時、次にめざす段階として、知的な(洗練された)表現を使おう、という課題が出てくるのです。これが日→英のコツ、つまり日→英の通訳の際に気をつける事です。
では次に、単調でない構文や単語・表現の身につけ方です。「使い慣れた構文を多用してしまい」と、この質問者も書いているように、英語構文や単語・表現は、自分自身がそれらに慣れない限り、使いこなせません。様々な英語の構文に触れ、単語や表現を覚えるには「実際に自分が使う事」が一番です。ですから、とにかく英語を能動的に使ってください。つまり、聞く・読むという受動的な接し方ではなく、話す・書くという形で学習することです。英文の音読、シャドウイングやリプロダクションなど、英語の音を声に出して発する、また英作文をするなどして、日常的に英語をアウトプットする時間を増やすしかありません。自分が喋りなれている文や単語は使うことに違和感がありません。使うのに違和感がない英文や単語を増やしていきましょう。
© ISS, INC.