英語翻訳者養成コース「生成AI時代の翻訳訓練について考えよう」

セミナー動画で理解を深める

生成AIと翻訳訓練Q&A

一般社団法人日本翻訳連盟が2年に一度発表する『翻訳白書』。
『翻訳白書2022』によれば、MT(機械翻訳)を自社のサービスに取り入れた翻訳会社は2020年から3倍に増加しています。加えて、ChatGPTに代表される生成AIを活用したサービスの拡大により、翻訳会社、そしてなにより翻訳者を取り巻く環境は2024年もさらに大きく変革することでしょう。

2024年春、アイ・エス・エス・インスティテュートでは、生成AI時代に立ち向かえる翻訳者を養成するための翻訳訓練についてみなさんと一緒に考え、そして提案いたします。

セミナー動画
「生成AI時代の翻訳訓練」

特別セミナー動画配信「生成AI時代の翻訳訓練」

講師 英語翻訳者養成コース 村瀬隆宗
対象 これから翻訳訓練を始めようとお考えの方、 CATやNMT、生成AIアプリケーションにご興味がおありの方

第一線で活躍する現役プロ翻訳者と、生成AI時代の翻訳訓練について考えます。
MT(機械翻訳)の精度が、NMT(neural machine translation)の登場によって大幅に向上し、それに比例して翻訳会社のMT導入率も大きく増えました。こうした現実は、これから翻訳訓練を始めようとお考えの方に知っておいていただきたいことです。
今回のセミナーでは、ライバルと思われがちなMTや生成AIを翻訳業務や訓練にうまく取り入れる方法を講師の体験を交えながらお伝えします。進歩のスピードは増すばかりですが、ここで立ち止まって知識を深め、生成AI時代の翻訳訓練について一緒に考えてみませんか。

生成AIと翻訳訓練 Q&A

~英語翻訳者養成コースの講師に聞く、一問一答「生成AI時代の翻訳訓練」~

「生成AIとMT」の進歩により翻訳者の役割はどのように変わると思いますか?

・AIやMTでできること、できないことのすみ分けが徐々に進むにつれて、前者については翻訳者がサポート役(前後のエディット等)を担う需要が増え、後者については翻訳者への要求レベルが高まる。(総合翻訳科講師)

・一次訳出とポイントチェックのあとの成果物の監修を一部の翻訳者がやることになるのではないでしょうか。(ビジネス英訳科講師)

・生成AIを効率的に活用し、生成AIからのアウトプットが、質・量の面で、価値あるものとするには、翻訳者は、利用する生成AIのアプリケーションの特徴を十分に把握し、同時にインプットする情報(依頼された原文の内容・背後の情報・事情等)の内容を正しく把握したうえで、その情報を的確にインプットし、生成AIからのアウトプットが適しているかどうかを判断する能力が必要です。生成AIを駆使するための新たな技術力・能力が必要となるかと思われます。(専門別翻訳科講師)

「生成AIとMT」の進歩により翻訳業界はどのように変わると思いますか?

・特定分野でソースとターゲット言語に造詣の深い翻訳者が最終の「監修」をするようになり、一次訳出や、数字・記号の突合せなどはAI(弟子)にさせるというような「人間と機械」のハイブリッド子弟制度になっていくのではないでしょうか。(ビジネス英訳科講師)

・翻訳に関しても、「生成AI」が積極的に利用されているので、作業時間が短縮され、それにつれて翻訳コストも低減してきている。しかし、その訳文のレベルは基礎~中級程度なので、我々が生きている内に翻訳者が「生成AI」にとって変わられることはないだろう(注:現時点では)。従って、将来的には「生成AI」を上手に活用できる翻訳者だけが生き残るであろう。(専門別翻訳科講師)

・AIやMTでできること、できないことのすみ分けが緩やかに進み続ける。(総合翻訳科講師)

・生成AIによるアプリケーションの種類、用途、多様性は、急速に成長しています。利用者のニーズに合ったよりきめの細かいアプリケーションが続々と開発されています。今後、生成AIのアプリケーションを導入し、利用する産業界・官公庁等においても、導入するための検査、導入後の管理監視・ガバナンス体制の設置が要求されるでしょう。それに伴い、彼らから、業務を委託される翻訳業界も、生成AIを導入すれば、それ相当の内部検査や管理体制が必要となると思います。新たな業務負担が生まれる可能性があります。(専門別翻訳科講師)

・定型的なものや一般的なビジネス文書(例:コレポン)については市場規模が縮小していくと思われる。その分だけポストエディット市場は拡大するかも知れないが、企業がそこに費やすコスト自体は減少する。(総合翻訳科講師)

・用語を導入すると素早く原文を翻訳するため、翻訳業務より編集、添削、推敲が必要となる。(ビジネス英訳科講師)

・単純に横のものを縦にするレベルの翻訳者は淘汰されていくと思われる。言いかえれば「生成AI」と同じレベルの翻訳者は、ポストエディットに流れると思う。一方でトップレベルの翻訳者や、「生成AI」にとってのデータのソースとなるレベルの翻訳者については、変化はないと思われる。(総合翻訳科講師)

「生成AIとMT」を翻訳業務で使っていらっしゃいますか?

・業務では使っていません。以前、日英の翻訳結果検証を行ってみたことはあります。(ビジネス英訳科講師)

・すでに、翻訳業務のプロセスに組み込んでおり、調べものや情報収集に使っている。また、作成した訳文や著述の仕上げ(誤字脱字チェックや言い回し等の修正)に使っている。(専門別翻訳科講師)

・日時や数値などについて、自動化のために使用することがある。(総合翻訳科講師)

・原文解釈、語句の使い分け等の参考として使っている。(総合翻訳科講師)

・調べものや情報収集に使っています。(専門別翻訳科講師)

「生成AIとMT」の利用のメリット

・使い方次第で、背景情報が必要な文章の精密な読解や語句研究に役立つ。(総合翻訳科講師)

・予想ですが、翻訳業務の効率化やコスト削減などが、導入の理由となると思います。現実には、導入する生成AIのアプリケーションの種類や使用難易度、管理体制などを考える必要があり、現時点で具体的、絶対的なメリットをあげることは難しいです。(専門別翻訳科講師)

・全体的には翻訳作業の時間短縮および費用の削減ができます。実作業においては、調べもの、原文の内容の把握、完成物のブラッシュアップに活かせると思います。(専門別翻訳科講師)

・同じ用語を使用している場合は、調べなくても機械が選んでくれる。(ビジネス英訳科講師)

・生産性のアップ(翻訳量アップ、時間短縮による費用対効果上昇)。(ビジネス英訳科講師)

・「速度」という面では人間は勝てない。(総合翻訳科講師)

「生成AIとMT」の利用のデメリット、注意すべきこと

・細部をチェックすればまだ発展途上(最適とは言えない翻訳箇所が残る場合がある)。MTはとくにDeep Learningのベースになった日本独自の対訳データの独り歩きの影響を受けているきらいがある。(ビジネス英訳科講師)

・翻訳事業会社も個人の翻訳者も、生成AIを導入・利用後は、アプリケーションのアップデート・リスク管理、ガバナンス体制が必要だと思います。MTと異なり、生成AIは、現在、グローバルに、また当局の下で、管理規制の発足・準備が進んでいます。規制の遵守やリスク管理には、リスクの認知、対応・遵守、個人の倫理観が必要です。(専門別翻訳科講師)

・例えば、「中黒」の訳し方や読み手を考えずに訳すため、今のところ人の手を入れないと完全な文章にはならない。また、原文の書き手が上手でなければならない。(ビジネス英訳科講師)

・人間が思考力を失う。翻訳者が語彙やニュアンスに対する感覚を失う。「筆力が落ちる」。(総合翻訳科講師)

・現時点ではまだ、誤訳や誤情報を提示することが多くエディットが必須。質問の仕方によって回答が違ってくる。(専門別翻訳科講師)

・MTソフト間で、バラツキがあり、同じ品質の訳ができない。(専門別翻訳科講師)

・翻訳の質はもちろん、情報の正確性も現時点では不十分。(総合翻訳科講師)

現在翻訳訓練を受けている人、これから翻訳訓練を受けようとお考えの方へ、「生成AIとMT」との付き合い方についてアドバイスがありましたらお願いします。

・「生成AI」や「MT」を積極的に使って、学習効率をアップしてください。ただし、「生成AI」や「MT」が出した回答を鵜呑みにせず、自分なりにエディットや確認を加えること。「生成AI」や「MT」はまだ、全面的には信頼出来ませんが、(日進月歩なので)うまく利用すれば、強力な助っ人になります。(専門別翻訳科講師)

・先のことは誰にもわからない。不安があるのなら今こそ好きなことに打ち込んで心を落ち着かすべき。(ビジネス英訳科講師)

・AIの学習元は圧倒的に英語情報なので、やり取りは基本的に英語で行うべき。また、翻訳の質はもちろん、情報の正確性も現時点では不十分なため、出力を鵜呑みにせず、疑いの目でもって「参考情報」として接する必要があります。たとえば、説明の矛盾や文法のミスを指摘すると間違いを認め、さらに突っ込むとまた前言をひるがえす、ということも珍しくありません。(総合翻訳科講師)

・デジタル化が進むため、ITに精通する必要があります。生成AIがどのようなデータを導入しているかを把握しなければならない。例えば外国人の目から描いた日本文化の文章なのか、日本人が書いた文章なのかでだいぶ内容と理解度が変わります。(ビジネス英訳科講師)

・「生成AI」やMTなしで翻訳ができるだけの実力があれば、逆に「生成AI」やMTを使っても翻訳はできる。(総合翻訳科講師)

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